キミの空になりたい
引退してまだ間もないというのに、すでに放課後の体育館が恋しくなっている。
ラケット振りたいー!って思いながら、いつも体育館のそばを通って校門を出て行くんだ。
今、うちの学校で3年生が残っている部は野球部しかない。
7月から甲子園への出場をかけた地方大会が始まる。
私の前に座っている新垣 くるみ(あらがき くるみ)は野球部のマネージャー。
毎日毎日、選手と一緒に汗を流して頑張っている。
「新垣ー。答案取りに来いー」
「あ、はいはいっ!」
私のほうを向いていたくるみは、自分の番に気づかなくて先生に呼ばれてしまった。
慌てて返事をして、答案を取りに行く。
「よかったー。補習授業はまぬがれたわー」
ホッとしたような顔でくるみは戻ってきた。