【短編】ばいばい
私の部屋のいつものソファに座る隼人。
今日、いつもと違うのは……親が旅行で居ない事。
だから“今日”を選んだんだけどね?
「……隼人」
「ん?」
「ぁっあのね?」
私を見つめる瞳を見ると言えなくなりそうだから、ゆっくり逸らした。
「ぁの……」
言わなくちゃ……。
もう……終わりにしなきゃ。
「別れ……ない?」
あ。
『別れて』の予定だったのに。
疑問化しちゃった。
でも言えた。
隼人、何て言うんだろ?
逸らした目を隼人に向ける事が出来ず下を向いたまま、隼人の言葉を待った。
「いーけど?」
「そ……か」
だよね?
やっぱ期待してたんだ……私。
「んじゃ……帰るわ」
「え?ぁ……うん」
そりゃ別れた女ん家……居る意味ないか。
ヤバ……鼻の奥がツーンとする。
泣きそー。
玄関まで見送る沈黙の時間が、長いようで短い。
「ごっごめんね?」
「……何が?」
「付き合って貰ってさ?」
「お前が謝る必要なくない?」
「そーなんだけど……」
俯いたままの私は、隼人の表情が見えない。
「はぁー」
小さく漏れる隼人の溜息。
あぁ、もう駄目。
涙が零れるよ。