【短編】ばいばい


――ガチャ

ゆっくりと動くノブ。



えぇぇぇえぇぇぇえ。




「美優? ……うぉっ!?」



へ?

この声……。


そーっと見上げると、



「はっ、隼人?」



そこには帰ったはずの隼人が居た。



「居るんなら出ろ……って何座ってんの?
え? 泣いて…?」

「これは……ちがっ……」

「何か……あった?」

「……」



俯いたまま顔あげれないよ。

泣いてグチャグチャだし。


てか、隼人は……何で?
ここに居るんだろう?



「……忘れ物でも……っえ?」



泣いてるのをバレないように必死に元気よく話したのに、突然腕を捕まれた。

座り込んでた私を引っ張って、そのまま部屋の方に行く隼人。



「えっ? ちょっ……隼人?」



何?

あ……あんなとこ座ってたから心配したのかな。

こんな優しさ。
今は、辛いだけなのに。

やっぱ、隼人は優しいな。



私の部屋のドアが閉まると、


私の顔に胸。
背中には手。
耳元には頬。








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