神様修行はじめます! 其の三
全てが完璧に、完全に定まる。


あたしは彼との誓いを全て果たし


彼と、彼の守りたいもの全ては守られて


あたしの彼への想いは完璧に証明される。


・・・完璧だ。まさに。


一点の非の打ち所も無い。


拒絶するべき理由など、いくら探してもどこにも見当たら無い。


完璧な事なら、拒絶の理由が無いなら、受け入れる以外になにがある?


絡めとり、包み込む。


細く粘る糸。こんなにも頼りない柔らかな糸が。

身動きひとつも許さないほどに全身を絡め取る。


あぁ、いつの間にか、蜘蛛の糸はこんなにも大きく。


大きく・・・。


「世界を、当主様をお守りせよ。それがお前の望みのはず」


「あたし、門川君を、守りたい・・・」


「そうだ。その為に偉業を成すのだ。さすれば・・・」


「・・・」


「お前が背負う罪は、その時にこそ浄化されよう」


ぴくん・・・。


罪。あたしが背負う罪。


まさに見えない蛛の糸のように、あたしに纏わり続ける罪。


周囲の大切な者や、あたしの子や孫にまで永遠に付きまとい続ける罪。


それが償われる?


あたしが罪を断ち切る事ができる?

なら・・・


全部、本当に全部・・・全部解決するじゃないか。


答えは・・・出てしまった。


「どうする? 天内の娘よ。受け入れるか否か」


「・・・・・」


「己が意思で決断するが良い」


大きな、大きな。


蜘蛛の糸が放さない。


もう一歩も動けない。この完璧な蜘蛛の糸からは。


誰一人として逃れることはできない。だってそれが道理なのだから。


だから、だからあたしは・・・


「・・・分かった。雛型になるのを受け入れる」


どこか夢見心地に高揚する気持ちを抱えて、コクリとゆっくり頷いた。

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