神様修行はじめます! 其の三
「蜘蛛の糸、だよ。言葉の威力で相手の思考を操るんだ」


「会話をしているうちに、相手の意向を受け入れねばならぬような錯覚を起こさせるのじゃ」


「話術のひとつだ。能力の高い術師が使えばその威力は絶大。敵なしだよ」


・・・・・。

そういえば。


あの女の人と会話している時。


最初は鼻で笑ってたのに、あの人の言葉を聞いているうちに、どんどん・・・。


どんどん、ものすごーく納得しちゃって。


自分にとって不利益な事なのに、受け入れるのが当然みたいな。


それが人として絶対に進むべき道、みたいな。


これを拒否したら、あたしもう人間失格の烙印! みたいな。


そうなったら生きてる価値ありません、極悪非道人間決定です、的な。


そんな風に思考を追い詰められ、絡め取られ、誘導されていた・・・ような。


・・・・・あれ? 

そっか。そうだよ。


あたし、そもそも騙されて脅されて連れてこられたんだし。


凍雨君の一族を人質にとられてさ。


あの連中、門川君達にバレないようにコソコソ裏で隠れて手の込んだマネして。


隠し立てするって事は、後ろめたい事してるからじゃん。


・・・極悪非道は連中の方じゃんか!


なにこれひどいよ! まったくひどいー!


「こんの卑怯者―――!!」

「気付くのが遅いんだよ。君は」


道場に向かって叫ぶあたしに門川君が冷静につっこむ。


でも今ならこうしてちゃんと判断できるけど・・・。


あの時はもう、ほんっっとに! 本っっ気で! 心の底から! 


あたしは雛型にならなきゃならないんだと信じてた。


すごい威力だなぁ・・・。


あたしを生贄にしちゃえって話なのにさ。


当の本人のあたしがほだされて泣いちゃうくらいだもん。


「あの『蜘蛛の糸』の能力で、あの女は長老の地位まで伸し上がったのじゃよ」


「話の筋は一応通っているし、あの主張をされては簡単に処罰もできないな」


「今は非常事態でもある。今回は痛み分け、という事じゃのぅ」


「あぁ」

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