神様修行はじめます! 其の三
「こんなのおかしいよ! 絶対絶対不公平だ!」

「天内君」

「門川君! たまきさんを助けて!」

「天内君、見てごらん。彼女の姿を」

「だから、見なくても分かってるよ! ほら、今にも崩壊・・・!」


崩・・・

・・・・・・

「たまき、さん?」


たまきさんは・・・笑っていた。

愛する人を見下ろしながら、幸せそうに。

まるで、昼寝している夫を見守っているかのように。

サラサラと我が身を崩しながら、本当に綺麗に微笑んでいた。


「彼女はもう、罪も償いも、悲しみも苦しみも越えてしまった」


悲しみ。苦しみ。全て。

そうだ。それはもう彼女にとって、恩讐の彼方。

なにも無い。

全て抜け落ち、過ぎ去り、あるのはただ・・・


愛。

愛だけ。


もう他には、なにもいらない。

愛だけに満ちた彼女の姿は、美しかった。

もう、体は半分も残っていない。

砂の城が波に崩れるように、その形を失っていても。

それでも、このうえなく、彼女は美しかった。


あぁ・・・人はこんなにも美しくなれる。


彼女は、あたし達と同じだ。

絶望を超えて未来を信じ、ついに望んだものを手に入れた。

茨の道の果ての果て。

千年の道の果てに。


だからあたしは、人々は、

どんな苦難の果てでも、癒し救われると信じることができる。


ここに、それを成したあなたが存在しているのだから・・・。

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