神様修行はじめます! 其の三
「これは元々、れっきとした「人」。我ら端境一族の者でおじゃりました」


一族の者?


そういえば絹糸と初めて出会った時、聞いた記憶がある。


座り女は、人とはいえない存在だけど、元は人だったものもあるって。


じゃあ、この人が?


「座り女は結界を張り、この世界を異形のモノの世界と区切り、守っておるのじゃ」


「以前はその役割を、端境一族の者達が務めておじゃりました」


結界を張って空間を維持し、この世界そのものを守る・・・。


そんなに重要な能力なら、さぞ他の一族達からも一目置かれたろうな。


門川と同等の栄華を誇っていたのも頷ける。


そしてこの人が最初の座り女になった。


結界の役目を引き継ぎ、たくさんの座り女たちが世界を守り続けている。

そういうことか。


あたしは暗がりの中、座り女の雛型をまじまじと眺めた。


他の座り女と同じく微動だにせず、何もしゃべらない。


ただ、そこに存在しているだけ。


かつては人間で、そして人間でなくなってしまった者。


・・・・・


なんだか、哀れだ。

人間でなくなる時、この人は何を思ったろう。


空間を維持するだけの「モノ」になった瞬間、何を思ったろう。


この人も普通に生きて生活していた人間だった。


大切な日常も、家族だっていただろうに。


そもそもなぜ座り女なんかが生まれたんだろうか?


それまでは、端境一族の人達がやってた仕事なんでしょ?


そのまま続けるわけにいかなかったのかな?

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