君はここにいる
桜の花開く季節はいつだって切ない
それは私が歩けばわかる
「藤咲輝夜!」
呼ばれて振り返ったのは儚げな美少女
お伽噺に出てくるお姫様のように繊細で華奢な少女だ
顔かたちだけでなく彼女にはそれ以外の要因もある
「ごめんなさい、春はいつもこうなってしまうの」
溜め息をついたのはつなぎを着て土まみれになっている烏乃学園の庭師だ
「あんたのソレ、メチャクチャ綺麗だけどさ。草花扱ってる者としては複雑だね」
苦笑混じりに庭師は輝夜の姿を眺める
事情を知り、特に嫌悪を抱いていない返答は輝夜の心を少なからず慰めた
立ち並ぶ桜の木
淡い桜色を水に溶かし込んだような不思議な色の髪
普段は透けるような白髪は草花に反応してその色を変える
(ソレだけなら良いのだけど………)
この烏乃学園に来て紹介された能力者のおかげで、今は抑えられている忌まわしい能力
うわべだけは美しい輝夜の異能
少しだけ微笑んで、輝夜は歩き出す
ユラユラと揺れるように輝夜の髪は色を変えていった