君はここにいる
不思議な男の子だ
響の能力も晴明の能力も効かないなんて………
けれど、と輝夜は俯く
彼は晴明や泉先生の能力を見て驚いていた
よくわからないが、事情を知らずに転入した?
ならば、泉先生のいうようなお友達にはなれない………
それも仕方のないこと
烏乃学園は全寮制だ
男子寮と女子寮に分かれている裏庭に輝夜は来ていた
緑の匂い
風も澄んでいる
俯いた顔を上げて深呼吸をした
葉の香りが肺を満たしていく
「あっ!」
「!?」
突然の声にそちらを向けばじっと輝夜を見る梔零次がいた
輝夜が目をしばたたかせて転校生を見つめると、同じように転校生も輝夜を見ていた
いや、正確には輝夜の姿を
「うわぁ………本当にファンタジーみたいだ」
「!」
咄嗟に輝夜は髪を押さえる
腰の辺りまである長髪の半ばまでが、薄い黄緑色に変わっていた
次に彼の口から飛び出す言葉が怖くて、内心焦る
「あぁ…これはね」
「キレイだね」
ゆっくりと
立ち上がり、淡く色付いていく髪を食い入るように彼は見つめていた
「水彩画から出てきたみたいだね」
その目には嫌悪も困惑もない
ただ単純に初めて見るものに対する好奇心だ
「………梔君は、ここで何してるの?」
「散歩。零次でいいよ、えっと」
「藤咲輝夜、同じクラスね」
「よろしく、輝夜」