ケチャップのないオムライス【短編】
私は今、こんな風に笑えているのだろうかと。
きっと笑えていないだろうなと。
「お前も、あんな風に笑ってたな」
貴史がテレビから目線を外さずに呟く。
私もあの頃、彼女のように楽しそうに幸せそうに笑っていたのに。
「旦那さんになる人は、きっと幸せだろうね」
それが、貴史の言葉への返事だったのか、
画面の中の彼女を見ての感想だったのか、
あるいはどちらでもないのか、それは分からない。