Loneliness



【Talk:テューロ(5歳)】



「……さむ……っ。」



立て付けが悪く、
ぎいぎいと軋んだ音を立てる扉を、
音を立てないよう そっと開けると、
肌を刺すような冷気が躰を襲った。



慌てて外に身を潜らせ、扉を閉める。
家の中で まだ寝ているであろう母さんを
起こしたくはなかった。



それに、母さんの お腹には
赤ちゃんが居る。
躰を冷やすのは良くない。



家の裏に在る物置から桶を2つ取り出し、
僕は村の広場に向かって歩き出した。



僕が暮らしている村は寒村と呼ばれていて、
夏は涼しいくらいだし、
冬は凍える程 寒い。
特に朝晩は冷え込むから、
躰の震えを抑えられない。



朝の水汲みは僕の大事な仕事だ。
それは通常は母親の仕事なのだけれど、
母さんは足が悪い上に妊娠を しているから、
この仕事は僕が やる事に なっている。



雪で滑る足元に気を付けながら
広場に辿り着くと、
井戸の前には既に長い列が出来ていて、
僕は最後尾に並んで桶を地面に置き
悴んだ手に息を吹き掛けた。



その時。
前に居た女性が振り返り、
僕に声を掛けて来た。



「あら、テューロじゃない。お早う。」


「あ、おばさん。お早うございます。」



見知った顔に出会い、
僕は慌てて ぴょこんと頭を下げた。



彼女は僕の幼馴染み、リューの母親だ。
家が近所な事も在って、
色々と お世話に なっている。



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