サイコーに不機嫌なお姫様。



「お前、何考えてんの?」


「何って?」


「彼女の前で気がある素振りするなよ! ヒヤヒヤして仕方ないんだよ」



膝の上で頬杖をついて、ため息をついてる俺にさゆりの手が俺の頭に伸びてくる。



「かっこよくなったね! ビックリしちゃった」


「触んなよ」



右手でさゆりの手を払いのける。今さらなんだよ。何を言われても、なびかねーての。



「ね……別れてから後悔しなかった?」


「お前が言うなよ?」



二股してたくせに……



「私……今日、直哉に会うの楽しみにしてたんだよ。今、どこで働いてるの?」


「なんでそんなこと教えないといけないわけ? お前とは終わってんだよ!」



立ち上がって部屋に戻ろうとした瞬間……さゆりに抱きつかれる。



「私、直哉が忘れられないよ。失ってから気付いた……直哉じゃないと無理だよ」



俺だって……嫌いで別れたんじゃない。試合前に御守りを作ってくれたり、教室まで笑顔で会いにきてくれたり……いい思い出だってたくさんある。



大好きだったからこそ、あの裏切りは許せなかったんだよ。



昔を思い出して固まっていると、奥からコツコツとヒールの音が聞こえてくる。



振り向いた瞬間、顔面蒼白になる俺。





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