羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
2
駆除作業が終わったあとの拠点は、いつもながら賑やかだ。
大部屋に屯している羅刹たちは、戦闘中のような鬼気を消し去り、和やかな雰囲気を醸し出している。
「酒童さん」
茨は部屋の隅にある椅子に腰をかけている酒童に歩み寄った。
「今日は、大丈夫でしたか?
具合悪くありませんか?」
「ん、どこも悪くねえよ。
久しぶりに、いつも通りの駆除ができた」
酒童は茨の心配を解くように笑いかける。
すると茨は、安堵した様子になって肩の荷を下ろした。
「そりゃあ、よかったです。
別の班になってからは、酒童さんに会う機会が少なくなってましたし」
「悪い、心配かけちまったみたいだな」
「いやっ、そんな、悪いだなんて……。
酒童さんが悪い訳じゃあ、ないし」
茨は慌てて両手を振る。
しかし、納得したような茨の貌は、酒童から見たらどこか複雑だった。
(当然、か。
あんな俺を見ちまったんだし……)
酒童は視線を落とす。
茨は少なくとも、これまでに2度、鬼である酒童を目の当たりにしている。
怖かったことだろう。
酒童はすまなくおもった。
特に昨日の駆除作業のおり、鬼になる寸前に見た茨の貌は、決して毅然たるものではなかった。