羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》
3
ひとりの隊員が、酒童と茨が向かい合って座っているところに颯爽と歩み寄る。
鬼門である。
三つ編みにされて纏められた髪が、虎の尻尾のごとく揺らめく。
「酒童さん」
鬼門は酒童を上から見下ろし、地に落ちる氷柱のような言葉を放つ。
「昨晩、また鬼になりかけたそうですね」
鬼門は容赦無く、酒童の傷口に塩を塗る。
「す、すみません、鬼門班長……」
酒童はへなへなと立ち上がり、頭を下げて謝る。
「あなたなら己の血を制御できるかと高をくくりましたが、存外、その程度のようでしたね」
「―――俺の力不足、でした」
「あの時は天野田さんが止めたようですが、もう彼の班ともまた別行動になる。
そうなった時は、誰があなたを止めるんです?」
鬼門は問うた。
酒童には、鬼門がとどのつまり何を訊きたいのかわからない。
そして、自分の意志だけではなかなか血の力を制御できないと知った今、どうすれば力を抑えられるのかも、わからない。
酒童はしばらく黙りだった。