ナツ恋。
「夏香ちゃーん」
「あ、はーい今行くー」
おばあちゃんがしびれをきらしているみたい。
おじいちゃんから受け取った野菜を持って台所に向かった。
「おばあちゃん、野菜持ってきたよ」
「あらあらありがとう。夕飯作るん手伝うてくれる?」
「うん、何すればいいの?」
こうやって誰かと台所に立つのはいつぶりかな?
渡してくれたエプロンが何だか新鮮で、ガラス扉の食器棚に写る自分を見てくるりと回ってみる。
「ふふふ、そうやねーそのおナスで田楽でも作ろうかね。食べられる?」
「私嫌いなものはお刺身くらいしかないよ」
「ほんとう?」
「あ、でも高級食材は何かイマイチ。味がよくわかんない」
おばあちゃんは声をあげて笑った。