学校一のモテ男といきなり同居
電話を切って顔をあげると、お風呂からあがった郁実がリビングの入口にいた。


濡れ髪をタオルで拭き、こっちへ歩いてくる。



「誰かと電話?」



「うん…友ちゃんと白雪ちゃんに、今日のこと話してたの」



「そか…驚いてた?」



「うん…みんなに心配かけちゃった。あと、郁実のことも驚いてた」



「だろーな」



「ねぇ、ひとり暮らし始めたのって…おじさんに日本に残るのを反対されたからだよね」



「いや、そーじゃない。親父には、真央が心配だってこと…マジメに話した…とにかく、お前はなにも気にしなくていーから」



「ホント…に?」



「ああ、心配すんな。海外で一緒に住みたいってのは、親父のエゴだよ」



「…………」
 


「成人したら自分の足で立ってかなきゃなんないのに、その手引きをするつもりが…結果、俺の足を引っ張ってる。

俺が描く未来は、いい会社に入って偉くなることじゃないから…」



郁実はあたしと向き合い、腰に軽く手をまわしてくる。



ジッと見つめられるだけで、どうにかなっちゃいそうなのに、



この状態に、クラクラする。









「好きなヤツを守れるだけの…包容力と、苦労させないぐらいの経済力があれば、それでいいかな」
  


「うん…郁実といたら、どんな状況でもあたしは大丈夫だよ」



「そっか。これから、俺がどんな道に進んでも…一緒に頑張れる?」



優しく見つめる郁実に、ドキドキ。



そんなの、頑張れるに決まってる。



郁実と一緒なら、



どこにいたって、どんな状況でも幸せだよ。



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