嘘の誓いとLOVE RING
だいたい、どうして凌祐はこんなに割り切れているのか不思議だ。
こんな風にキスをすることに、違和感はないのだろうか。
いくら幼なじみとはいえ、仲良くなかった私となのに…。
「ほら、書けって。書かないなら、もう一回キスするぞ?」
「わ、分かったって。書くわよ」
あんなキス、そう何度もされてはたまらない。
これを書いたら、本当に結婚をしてしまう。
私は人妻になってしまう。
女性なら、一度は夢に見るだろう。
愛する人との結婚を。
だけど今、私がしようとしている結婚は、ただの憂鬱な意思に反する結婚だ。
ゆっくりと、一文字ずつ書いていく様子を、凌祐は隣で黙って見ていた。
そして書き終え、印鑑を押した瞬間、婚姻届を素早く取り上げたのだった。
「よし!じゃあ、出しに行くか」
「もう?そんなに急がなくても…」
やめようと思っても、取り返しがつかなくなる。
そんな気持ちが脳裏をよぎったけれど、荷物を手に取った凌祐は、私を笑顔で促した。
「ほら!美亜、行くぞ」