嘘の誓いとLOVE RING
二人の会話はまだ続いていたけれど、出て行ってしまって聞く事は出来なかった。
呆然とするしかない私は、ようやくドアを開けた。
洗面台には、佐倉さんの残り香らしき甘いいい香りがする。
この香りを、凌祐はずっと抱いていたのだ。
佐倉さんではなく、私だけが知っていると思っていた凌祐の温もり。
それは、明らかな間違いで、二人の方がずっと長く関係があったに違いない。
「どうして、こんな辛い思いを味わわなければいけないの?」
一粒、二粒、涙がこぼれる。
好きでもない人と結婚させられた挙げ句、その夫の側には関係を持った女性が常にいる。
そんな状況に、耐えられるはずもなかった。
結局、結婚自体もお父さんたちの身勝手な考え方から生まれて、凌祐の優しさも表面的なものにすぎない。
みんな、私に対する愛情なんて、かけらもなかったという事だ。
「最悪じゃない…。凌祐のバカ」
こんな結婚を、いつまでも続けられるわけがない。