なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 野々宮さんに呼び出された萩原さんは、そこでビジネスの話をされた。

 確かに彼女には豊かな人脈と太いパイプがある。

 何十年か振りに会ったってこともあり、昔話から始まっていろいろと話が飛んでしまい、その間にもお酒は回り、ビジネスの話の頃にはすっかり出来上がっていたということだ。


「そこまで飲むことあります?」


 午前3時に話す話じゃないけど、さっきまでずっと抱かれていて、ようやく解放されたところだ。

「飲みすぎた」

 自分事なのに他人事のように笑う。

「腕組んで入って行くところを見たときは本当にショックだったんですよ。笑い事じゃないです」

「確かに。そんなとこ見たら確実に疑うし、そう思うよな」

「思いますね」

「悪かったよ。もうしないから」

「...はい」


 何もなかったという言葉を信じよう。今こうやって二人で一緒にいられるんだから、それでいいじゃない。


 汗ばんだ体が落ち着いていく。萩原さんの胸に顔を埋めると、長い腕でぎゅっとしてくれて頭にキスしてくれる。


 そうだ、そう言えば...


「聞きたかったことがあるんですけど」

「なに」

「萩原さんの名前って...なんて言うんですか?」


 髪の毛を撫でていた手が止まり、胸が小さく上下した。

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