なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 一年を締めくくる最後の日に一人で家にいるのもなんかいや。

 贔屓にしているいきつけのバーはやはりカップルばっかりだけど、

 その中に混じってカウンターの端っこに座っていつものカクテルを頼んだ。

「あれ? 夏菜ちゃん大晦日に一人? なわけないか。それはないな。待ち合わせ?」

 マスターはまだ30代で若い。自分のバーが持ちたくて若い頃からバー経営の勉強のこととかお酒のこととか勉強しながらお金を貯めてやっと持った店は、反響もよくて客層もいい。マスターの人柄がそうさせているのだろう。

「...私ね、ふられたっぽいよ」

「何それ何その嘘? エイプリルフールはまだ先だけど?」

 作りかけのカクテルを放棄して私に身体ごと向けた。

「ほんとなの。さっき喧嘩しちゃって、いろいろ探したんだけどどこにも見当たらないし、ここにいるかなって思って来たけど、いない」

「うん、来てないねここには。電話は?」

「電話もメールも出ないってかそもそも電源が入ってない」

 放棄したカクテルを破棄し、新しいものを作り直して私の前に出してくれた。

「作り直さなくてもそれでよかったのに。もったいない」

「いや、これは俺のプライドだから」

 お酒には容赦無いマスターは、お酒を作ることにかけては自分なりのプライドがあって、気に入らないとお客には出さないっていう徹底ぶり。

 だからなのかは定かじゃないけど、けっこう年配のおじさまもふらーっと来ては静かにグラスを傾けている。

 店内もお洒落に暗く、オールドジャズがかかっていて落ち着きのあるバーなので、若くてちゃらちゃらしたのはいない。

 値段設定が若干高めなのが気になるところだが、それだけ出しても満足できる。




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