なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 「ねぇマスター、あと少しで年が明けちゃうね。私なにしてんだろうこんな時に。なんだかちゃんと考えられない」

「なっちゃん、これは俺からのちょっと早いお年玉。このあと何飲みたい?」

「いいの?」

「いいよ! 何でも飲んできな。あ、みんなには内緒ね」

 形の良い唇に人指し指を立ててウィンクしたマスターは、目尻に皺が寄って口元にしわが入って、ダンディーだ。大人ーって思って見とれてしまう。

 
 胸元が深くV字にカッティングされたワンピースは膝丈で、柔らかい素材のものなので、よく伸びる。

 これで何杯でもお酒が飲めると、彼氏にふられた頭はちょっぴり嬉しさを取り戻した。

 こんなことで嬉しさを取り戻せるなんて、なんて安上がりな女なの。

 今日はレッスンは無かったので髪の毛は下ろしている。といっても肩につくかつかないかくらい。いつもは面倒くさいから一つにまとめておだんごにしちゃってるけれど、今日くらいは少しお洒落をしたかった。

 ヨガのインストラクターだけあって太ってては話にならない。当然のように食事には気をつかっているけれど、もう今日はそんなこと言ってられない。

 今日は一年に一回のご褒美デイということにして、

 やけ酒! 飲みまくってやる!

「マスター、もっとお酒!」

 最初の3杯は味わうことなく一気に飲み干した。

 そしてその後もペースを落とすことなくカクテルを味わいつつもぐいぐい飲む。

 もうそのへんでやめたら? という制止にも聞く耳を持たず、グチをこぼす相手もいないので、ひたすらに飲んで、忘れることに命をかけていた。

 だって、一人で家なんかにいたら、どうしようどうしよう......ってエンドレスに頭の中で回ってしまって、余計ダメになる。

 こういうときは無理矢理にでも外に出て人ごみの中に紛れていた方がいいってもんだ。

 何杯飲んだのか分からない。

 トイレに行って化粧を直したものの、酔っ払ってて視点が合わない。





< 8 / 261 >

この作品をシェア

pagetop