②灰川心霊相談所~『闇行四肢』~
「何……というと?」
「君の従兄弟を呪い殺した相手を見つけ出すことか。この一連の騒動の終結そのものを望むのか。その方向性は同じようで全然違うことです」
「……後者です。従兄弟のことは、残念だけど、俺の中ではこの騒動を解決することにこそ意味がある。もちろん、個人的な興味も含めて!」
「なるほど、ね」
灰川さんは意味深な眼差しを私に向ける。
「夕浬さんは、本当に厄介な仕事ばかりを拾ってくるものです」
「いやいや、私のせいじゃないですから」
「――褒めてるんですよ」
濡れ衣だ、と言わんばかりの私に、彼は目を閉じ、そっと微笑みながらそう呟いた。
「しかし『現象』そのものの終結ですか。これは僕も初めての試みですね。個人の因縁を紐解くのとはだいぶベクトルが違う。いままでになく、随分と『異質』な依頼です」
そういいながらも、彼はいつもの厭らしい笑みを浮かべている。
普段の気だるい表情とは対照的な、三日月のような鋭い笑みを。
「他の霊媒師にも相談しようかなと思っていたんですが、俺! 灰川さんの仕事を間近で見てみたくて! いったいどんな力を使うのか、この目でしっかりと見届けさせてもらいますよ!」
この男もこの男だ。従兄弟の不幸を気にも止めていないのだろうか?
関われば関るほどに、なるほど『奇人』だと思い知らされる。
「……好きにしていいですが、無能力者の仕事を見ていても外野は大して面白くないんじゃないですかね」
受け流すようにそう答えると、彼は支度を始める。
「まーた謙遜しちゃって。あの灰川倫介が無能力者なわけないじゃないですかぁ! ねぇ、瑞町先輩!」
ニヤリと、したり顔で白条君が私の肩に手を置く。
私は静かにその手を払いのけると、ため息混じりに答えた。
「いや、あの人本当にただの普通の人間だよ」