②灰川心霊相談所~『闇行四肢』~


「ああ……もっとも、『お前ぐらい』の奴なら……勝手にアレにたどり着きそうなものだけど、な……」
 

 男は、白目の複眼をギョロギョロと動かしながら、その身から蒸気を上げていく。

 ……消滅が、近いのだろう。


「……それじゃ、いくよ。俺も消える場所ぐらいは選びたいんでね」


 私は、この薄れていく男になにもしてあげることはできない。

 私には都合の良い『救済』の力などない。

 霊となってしまった者にできることは少ないのだ。

 私にできるのは、ただ『知る』こと。真相を探求し、事実を理解することで消えたこの人に意味を与えることはできる。それが唯一の救いになると私は信じている。

 ――私自身の起源がそうであるように、真相を追うことで私は私自身が背負った『贖罪』の運命の中を進んでいける。

 悲しみ、憎しみ、そして愛。

 そんな多くの因果の上に成り立つ私は、より多くの真実を紐解き救うことで罪と向き合っていけるのだ。



 私のような過ちを二度と繰り返させない。
 


 それが私の信念であり、生き方。



 『あの人』の言うところの『存在理由』なのだろうと、そう理解している。


 救える運命を全力で救っていく。それが私の在り方だ――……。



 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……。




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