咆哮するは鋼鉄の火龍
 火龍は初期配置に並び変えられ、最後尾に主砲車が置かれた。

片倉「だっせー」

 片倉がそう言う先には急ピッチで付けられた補助輪が進行方向右側に付けられた火龍があった。

片倉
「虫みたい」

宇佐美
「しょうがないでしょ、有り合わせの車輪をかき集めてやっと作ったんだし」

片倉
「まーこけないならそれでいいけど」

佐竹
「出撃するぞ、全員乗れ」

立花
「各員に通達、これより火龍は敵移動要塞を攻撃する。
 
 敵は今までには無い火力を有している。
 
 被弾すれば相応の被害が及ぶ、消化活動が追い付かない場合は隣の車両に移れ。
 
 この巨人を倒さなければ東名の灯は拝めんぞ、チキンヘッズの活躍に期待する以上」
 
 火龍は渓谷の守備兵に見送られゆっくりと動きだし、どんどん加速していったが巨人に辿り着く前に自体が急変した。

通信(ノッポ)
「大変です、前方より飛行物体接近。

 先に報告した物です」

立花
「飛行物体?

 …機関車!緊急停止、後退しろっ急げ!」

 立花と佐竹は急ぎ上部ハッチを開けて確認した。

佐竹
「こりゃ不味い戦闘ヘリって奴だ」

立花
「やばいぞ、機関車全速力だ、ノッポ!

 あれだろ運ばれてた奴は?
 
 上に上がって撃ち落とせるか」

通信(ノッポ)
「車両上部に備え付けてしまって角度がとれません」

通信(コック)
「敵12時の方向、来ます!」
 
 空を切り裂きながら敵の戦闘ヘリが火龍上部を機関銃で襲い、前方から次々に車両の甲板を激しく叩いた。

通信(本多)
「俺が行きます、ノッポを貸してください」

立花
「気を付けろよ」

本多
「リトル!火炎瓶を作ってたろ、よこせ!」

リトル
「エラソーに」
 
 そう言いながらリトルは急ぎ本多に火炎瓶を渡し、本多は急ぎ甲板に上がり先頭から移ってきたノッポが後に続いた。

本多
「頼むぞノッポ」

  旋回してくる戦闘ヘリに向かい本多が火炎瓶を投げつけた。
 
 強力な腕力で戦闘ヘリの前方に向かった火炎瓶をノッポが狙撃し見事命中させた。
 
 一気に広がった炎がヘリのコックピットを襲い、視界を塞がれた敵はパニックになり、急上昇した。
 
 その間にノッポがヘリに撃ちまくって援護射撃を行い、本多は列車の甲板を伝い警戒車両まで走った。
 
 顔を紅潮させ本多は看板に取り付けられた九七式を力任せに引き剥がした。
 
 炎が収まった戦闘ヘリを本多が狙撃し当てられないまでも回避させた。
 
 甲板に上がってきた朱達磨の一斉射撃で再度ヘリを退かせ、さらに本多は火炎瓶を投げたが外れてしまった。
 
 敵の落とした手榴弾が甲板上で炸裂し、二発目を島津が蹴り落とした。
 
 戦闘ヘリは再度車両の横から朱達磨達の一団を襲い、シールドを構えた兵士が一人外に吹き飛ばされた。
 
 甲板上では一進一退の攻防が繰り広げられたが、次第に火龍は防戦一方になってきた。
 
 しかし本多が肩に九七式を担ぎノッポがヘリを狙撃、それが後部座席の操縦者を横から吹き飛ばし大きく後退させる事に成功する。
 
 本多はその場を朱達磨に任せ、車両に戻り、立花に作戦を進言しレール搭載車両からエアロバイクに乗り飛び出した。

 本多は火龍よりも早く渓谷に戻り、崖上の監視小屋まで一気に駆けあがった。

 何とか渓谷までたどり着いた火龍は必死の抵抗虚しく少なからず被害を受けていた。

立花
「機関停止。、敵を引き付けるぞ!
 
 前面下方に火力を集中し機銃の一斉射撃を行う」

 敵の戦闘ヘリは渓谷の正面から突撃してきたが、火龍の一斉射撃に怯み上空ヘと逃げた。

 そこにはロケット発射筒を構えた本多が崖上で待ち伏せていた。

 警告音に気づいたヘリは緊急回避をしようとさらに先頭を持ち上げたが、尾翼に直撃し回転しながら渓谷に落ち爆発した。

本多
「ざまーみろ!」

立花
「くそっやってくれたな、被害報告いそげ、破片を線路からどかせ」

 指揮車の服砲の砲身が破損、電源車機銃が大破されていた。

佐竹
「火力は落ちましたね、せっかく順調にレベルアップしてたのに」

立花
「直ぐに出発だ。

 出鼻を挫かれた、要塞の連中に考える暇を与えさせるな」

佐竹
「あんなもん出してくるなんて、敵も必死ですね」

立花
「みんな死にもの狂いにもなるか」

本多
「一人列車から落ちた奴は脱落です、腕が折れてました」

立花
「よくやってくれた。本多は大丈夫か?」

本多
「一発いいのを貰いましたがアーマーで助かりました。
 
 やり返してやりますよ、部下の仇は討ちます」

立花
「自重はしなくてもいいぞ、存分にやってくれ」

本多
「お任せを」

立花
「各員、龍の尾を踏んだ償いを奴等にさせてやるぞ!

 機関前進!」

 敵の急襲に思わぬ打撃を受けた火龍は怒ったかのように警笛を鳴らし突撃するのであった。

 
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