咆哮するは鋼鉄の火龍
 25日間の研修を終えた全乗組員が火龍の前に集められ緊張の面持ちで出発の時を待っていた。

 工員達は最後のチェックを行うのに忙しいそうにしている。

 昨晩の宴会の為に二日酔いになった立花の元へ黒田大佐がやって来た。

黒田
「酒臭いぞ」

 立花は罰が悪そうに笑った。

立花
「作戦進行上必要で」

黒田
「榊原さんには近づくなよ、寝不足で不機嫌だからな」

立花
「絶対そうします」

黒田
「立花…いや何でもない」

立花
「どうしました?」

黒田
「出発前に悪いが言いたい事が2つあるんだ、

 1つはどうも幹部のスパイが潜り混んでるみたいでな」

立花
「火龍にですか?」

黒田
「他に何処に潜り混むよ?」

立花
「そんな、今さら」

黒田
「まーあまり気にするな、本部への通信手段は無い」

立花
「それはそれで問題ですよね」

黒田
「もう1つは外を見てこい、

 ここでは見えない事も見える筈だ」

立花
「どうゆう意味ですか?」
 
黒田
「ふむ」

 黒田が話そうとした瞬間に竹中大将がやって来た。
 
 その場にいた全員が敬礼を行った。

竹中
「おうっ揃ってるな」

黒田
「立花少佐以下、各員何時でも出撃可能です。

 出撃の号令をお願いします。

 佐竹全員並ばせろ」

佐竹
「全員整列!注目!」

竹中
「いよいよだな…
 よしっ全員聞け!

 本作戦に失敗は許されん、

 諸君の双肩に人類の命運がかかっていると思え!

 我が軍こそが文明再編の礎である!

 この老いぼれの耳には敗戦の報告は届かんぞ!

 火龍を持って復興の障壁となるものを全て焼き払え!

 …総員出撃!」

 竹中大将の号令を合図に全員が一斉に動き出した。

 黒田は立花に精一杯駆け寄り

「まあ死ぬな」と一言声をかけた。

 立花はさっきの話の続きが気になったが、笑顔と敬礼で返事を返した。

 火龍は蒸気を上げ、地上へと続くゲートは全開された。

 工場の作業員達榊原一家が帽子を降り、歓声をあげる。

 ゆっくりと動き出す火龍を満足そうに油まみれの榊原は見届けていた。

 ゲートを抜けると視界が開け朝日が鋼の龍を照らす。

 鋼はそれを力強く跳ね返す。

 朝早くの出発にも関わらず、箱根の人々がポリス中央に敷かれたレールの脇に並び、一目火龍を見ようと見送りに出てきていた。

立花
「軍旗掲揚!」

 指揮車から主砲に伸ばされたワイヤーに軍旗が翻った。

 低くそして遠くまで届く警笛が町中に響き、人々の歓声に押され火龍は加速していく。

 箱根の正面門前に多くの兵が敬礼の状態で出迎えていた。

 巣を飛び出した火龍はどんどんスピードを上げて行く。

立花
「行くぞ!必ず皆で戻ってくる」

 人々の歓声に応え再度警笛が鳴り、箱根ポリスにしばらくの別れを告げた。

 散々な失敗に終わった北方の領土奪還作戦に当てられたのは全く関わりの無い部署から集められた烏合の奇兵隊であった。

 敵の戦力は多く、およそ成功するとは思えないと予想されていたが、彼らは幹部の思惑を他所に快進撃を続けて行く事になるのであった。

 
 


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