狡猾な王子様
「……で、なにがあったんだよ?」


真剣な表情で追求する秋ちゃんは、余程私のことを心配してくれているのだろう。


英二さんのことを話すわけにはいかないし、こういう時は秋ちゃんのお節介が有難迷惑に感じてしまいそうになるけど……。


やっぱり、その気持ちは嬉しかった。


昔から兄妹の中で一番ぶっきらぼうだけど、本当はとても優しくて、家族の誰よりも心配性。


それが、秋ちゃんなのだ。


「うちの家族って、すごく仲良しだよね」


「は?」


「両親もおじいちゃんたちもほとんど喧嘩なんてしないし、春ちゃんもなっちゃんも奥さんたちと上手くいってる。兄妹仲だってよくて、嫁姑問題も特になくて……」


首を傾げた秋ちゃんを見ながら微笑を浮かべ、あくまで平静な声音で疑問を投げ掛ける。


「こういうのを“円満”っていうんだよね?」


「……まぁ、そうだな」


秋ちゃんは脈絡がないように思える話に怪訝そうな顔をしながらも、すぐに小さく頷いて見せた。

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