狡猾な王子様
「あぁ、あなたは知らないわよね、こんなこと。でもね、この際だから知っておいた方がいいと思うわよ」


あなたのためなのよ、と言いたげな笑みが、私に向けられたけど……。


私がなにに驚いているのかをわかっていない佐武さんの言葉は、先ほどまでの威力を失くしていて、ほんの少しだけ平静を取り戻せた。


英二さんの好きな人は、前に木漏れ日亭で見たみちるさんという女性だろう。


直接聞いたわけではないけど、以前に目にした光景と彼と佐武さんのやり取りで確信に近いものを得ているし、違うと言われる方が納得できなかった。


この想いが報われないことも、英二さんに好きな人がいることも、もちろんとてもつらいけど……。


佐武さんからは“知っていたことを聞かされた”だけだから、彼女の説明自体に傷ついたわけではない。


「あの……」


「なに?」


「佐武さんは、英二さんから好きな人がいることを聞いたんですか?」


少しだけ気持ちを持ち直した私は、控えめながらも疑問を紡ぐことができた。

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