狡猾な王子様
「牽制、って言っちゃうと、ちょっと語弊があるんだけどさ……」


“牽制”という二文字にギクリとなって、思わず身構えてしまう。


「山野農園の野菜は本当に美味しいから、これからも注文させて貰いたいし……。そうなると、冬実ちゃんともお付き合いが続くよね?」


何度もグラスを口に運ぶ英二さんは、とても慎重に言葉を選んでいるようだった。


「でも、俺の中には“誰かひとりと付き合う”っていうスタンスはないから、それならいっそ思い切り突き放す方がいいと思ったんだ……」


ズキンと、胸の奥が痛む。


英二さんみたいに素敵な男性と釣り合わないことはちゃんとわかっているし、彼に想って貰えると自惚れるつもりもない。


だけど……。


それでもやっぱり、こうして目の前に現実を突き付けられてしまうのは、予想以上につらい。


「でも、勘違いしないで?」


黙ったまま俯きがちでいる私に、英二さんは目線を合わせるようにしてから優しく諭すように小さく笑った。

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