【完・短編】~彼女は春を告げる~
『あーあ、もう家か』
少しだけ寂しそうな美琴の目が俺を捉えた。
ドクンと音をたてた心臓。
少し息苦しさを覚えるほど真っ直ぐな、その視線に耐えきれず俺はすぐに目をそらした。
平常心…平常心。
「何言ってんだよ、明日も会えるだろ?」
これは美琴に言ったのか、自己暗示か。
『そう、だね…』
納得したのか、していないのか。
いや、無理矢理納得しようとしてるのか。
曖昧な返事が返ってきた。