青い猫の花嫁
愕然とするあたしを見て、正宗さんは作り物のような無表情から、柔らかく笑みを零した。
「……。僕は、千年前に猫や他の動物達に術を施した、陰陽師の末裔です。それを見届ける事がお役目です。 僕が受け継いだ記憶は、千年目の年に、猫の願いを叶える事。
それが成されれば、万事うまくいくのです」
「え?」
ば、万事うまくいくって……。
「それって、あたしがトワのお嫁さんになるって事ですか?」
「はい」
「ま、待ってください。約束の年……今年それが叶わなかったら、どうなるんですか?」
「……」
正宗さんは、少し押し黙ると、小さく息を吸い込みながら言った。
「これからまた千年、物憑きとして生きる事になります。それから僕の陰陽師としての力も弱くなっています。この先も、彼らに呪符を施せるか、わかりません」
「そんな……」
言葉をなくして、あたしはただ、正宗さんの横顔を見つめていた。
もし、今年『猫の約束』を果たせなければ、十二支のみんなは、トワみたいに変身する体になっちゃうって事?
「そんな大役……どうして、」
そこまで言ったあたしの唇に何かが押し当てられた。
え?
ニコ!
そう聞こえて着そうな程、爽やかに微笑む正宗さん。
その笑顔が眩しすぎて、目眩がした。