青い猫の花嫁


「……っ」


気が付くと、正宗さんの指が押し当てられていて。
その感触に、出かかっていた言葉が喉の奥に引っ込んだ。

吸い込まれそうな程、真っ黒で艶やかな瞳が、あたしの事を覗き込んでいる。

弾かれたように頬が火照りだす。

それをわかっていても、どうする事もできずに、あたしはただ正宗さんを見つめてしまった。


「難しい事は考えないでください。……お茶が冷めてしまいましたね。あ、でもこのお茶菓子はとても美味しいですよ?なんて言っても藤屋さんですからね」

「……え」


正宗さんは、何事もなかったかのように心底幸せそうに淡い桜色のウサギを、なんのためらいもなく口へ放り込んだ。

モグモグ動く彼の頬を見て、茫然としてしまう。


「ん。美味しい」


……難しく考えるなって言われても、無理だよ。



「あの、正宗さん……トワ、猫の願い事ってなんなんですか?」

「貴女と契りを交わす事です」

「……契りを交わすって、あの……?」

「簡潔に言うと、結ばれる事です。つまり……」

「いえ!言わなくていいですっ」


具体的に説明されそうで、思わず正宗さんを止めた。


トワと、あたしが……?
む、結ばれる……む、むむ、無理だよー!




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