青い猫の花嫁

ゴクリと飲みこんだオレンジジュースは、なぜか酸味だけが口の中に広がった。

本当は、ふたりの事がすっごく気になるのに、見ていられなくて。
ゴクゴクと飲み干すと、松田君にかじられたガレットに手を伸ばした。


と、その時誰かがあたし達の座るテーブルに腰を落とした。

一瞬トワが来たんじゃないかってドキッとした。
でも、爽子の隣に座ったのは郁くんだった。

小さくため息を零した郁くんは、あたし達に「ども」と頭を下げる。
その顔はなぜか疲れていた。





「遅かったね。でも、なんでナギさんも一緒なの?」


そんな郁くんに松田君がお店の入り口でもめてるふたりを眺めながら、呆れたように言った。


「え?あ、今そこで会ったんだよ?たまたま……」


そう言って、郁くんはあたしをチラリと見た。

う……気を使われてる……。


あたし、全然気にしてないし?
トワとナギさんは、もともと仲良しだったわけだし。
だから、別に、あたしはなんとも……。

自分に言い聞かせるようにしながら、パクパクっと頬張ったオレンジガレットはとても甘くて、ほっぺが落ちちゃいそうだ。


「おいしぃ……」


少しだけ幸せな気分に浸っていると、フォークを持つ手がいきなり誰かに掴まれた。


へ?


見上げるより先に、そのまま強い力で自然と腕を引かれて、あっという間に立ち上がってしまった。


えっ……あ?


ポカンとしてるあたしの目の前には、なぜかトワがいて。

肩を引き寄せるようにしてまたソファに座らせると、トワはあたしと松田くんの間にストンと腰を落ち着けた。



「……」

「……」



―――は?

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