青い猫の花嫁
……そして。
パク!
フォークに刺さったままだったガレットは、零れ落ちる前にトワの口に放り込まれた。
目の前で、あたしの手首を掴んだまま、モグモグとさせ、その綺麗な顔を一瞬歪ませて。
「ん……冷めてるよ?コレ」
え?
あ……
「ご、ごめん」
って、ちがーーう!
何、謝っちゃってんのッ
ハッとして、一気に頬が熱くなる。
「じゃなくてっ、……なにするのっ」
唇の端についた、オレンジソースをクイッと指で拭ったトワは、「なにが?」と首を捻った。
そこにいる全員、目がテン。
「あ……、あー、藍原、遅かったなっ」
やたら明るく言う松田君の声が、空回り。
シンとした間が広がる。
えっとえっと……。
なぜかあたしよりも真っ赤になった爽子と目が合って、松田君の頬がピクリと引きつった。
郁くんの仔犬のような目が、まんまるに見開かれていた。
うう……恥ずかしいよ。
いまだに離れない右手が行き場をなくして、固まっていた。