青い猫の花嫁
ドキーーーン!!!!
心臓が飛び出しそうになって、慌てて首を振る。
「なな、なんでも、なんでもないよ?ね、さ、爽子」
「えッ、あ、うん。ないない。何もない。カナトが変な事なんて言ってない……あ。」
しまったと自分の口に手を当てた爽子。
一瞬その場が「あらー」となって、でも廉次さんも爽子も平静と装おうとしてくれた。
でも、トワはそんなあたし達を眺めてから、小さくため息を零した。
「……カナト、真子に何言ったの?」
「んあ?そいつに聞けば」
そう言って、フフンと笑ったカナトくん。
その笑顔は、楽しそうで……。
ひええええ……。
外はすっかり日が落ちて、空には触れられそうな程大きな満月が浮かんでいた。
お店の外のカフェテラス。
そこからは、お月様がよく見えた。
月は人を惑わせるって言うけど、確かにそうかもしれない。
だって、こうして見つめていると、引き込まれそうな気がしてしまう。
ジッと見上げていると、都会の喧騒が遠のいて、風の音だけが耳元をかすめた。
それから、思い出す……。
あの雨の日の、淡く光る猫の姿……。
「――それで?」
「へ?」
ハッとして、声のした方を見ると、すぐそこでトワがあたしの顔を覗き込んでいた。