青い猫の花嫁


「ほら。総司朗、この子が立花真子ちゃん」

「ちょ、廉次」


呆気なくトワの背中から飛び出したあたし。
背後から、トワの少しだけ焦った声が聞こえる。



「あ……」


って、止まってる場合じゃないってば。
そのまま固まっていたあたしを、廉次さんはグイと押しやった。


え、ちょ、廉次さんッ!!!
いきなり何するんですかーーーッ!

恐る恐る顔を上げると、冷ややかな目であたしを見下ろす総司朗さんがいて。


「……」

「あ、あの、初めまして。あたし、今日はお花見に呼んでもらえて……」


もうしどろもどろ。

真っ白なワイシャツに、シワのないパンツ姿。
それに端正な顔立ち。
その切れ長の瞳がスッと細められ、総司朗さんはあたしから視線を逸らした。


「廉次の勝手な行動は昔からだが、これはちょっとやりすぎなんじゃないか?」

「え、総ちゃんまでそんな事いうの?」

「その呼び方はやめろと何度言えばわかる」

「えええ?子供の頃からの癖だもん。今更直せって方が無理でしょ」

「……。廉次、俺の方が年上だって事忘れてないか?」



その会話、どこかで……。

って、今はそんなのどうでもよくって。
あたしを離して下さい、廉次さん~。

さっきから肩を抱かれ、あたしの頭上で話をするふたり。

とっくにあたしの話題はなくなってるのに、廉次さんの手が離れる様子はない。


う……。
帰りたい~。


「ちょっと廉次、いい加減真子を返してくれる?」


え?トワ?
廉次さんの手から解放されたと思ったら、今度はトワの腕の中。
そして感じる凄まじい、熱視線。……ナギさん怖い。


はあ……。
……もうわけわかりません……。



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