WITH


ボーッと上ばかりを見つめる私の膝にポンッと何かが当たって……


視線を向けると、私の足許をコロコロと転がるボールと頼りなげな足取りで歩いてくる1歳くらいの男の子が目に入った。


私の膝に何らかの理由でボールが当たって、あの男の子が追い掛けてきた……そういうことなんだろう。


私は立ち上がってボールを拾うと、男の子に「はい、どうぞ♪」と差し出した。


男の子はにこっと笑って、
「あーとう!!」とはっきりしない言葉ながらもお礼を述べて、またヨチヨチと駆けていく。


その先には、母親らしき女性が両手を広げて待っていて、同時に私に頭を下げているのも目に入り、慌てて頭を下げ返した。


微笑ましい気持ちを感じながらも、“母親と子供”という映像が蜜華さんを連想させて、胸がズキズキと痛むのを感じる。


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