WITH


牧師さんが誓いの言葉を述べ始めた時、



「なんであの日、俺と別れるなんて言った?」



そんな廉の声が聞こえた。


なんで……なんて、廉が一番わかってるんじゃないの?


何も言葉を返せないままでいると、不意に左手首が掴まれた。



「紗和……、答えろよ?」


「今更、そんなことどうだっていいじゃない……」



掴まれた左手首を離そうと、引いたり捻ったりしてみても、思ったよりも強い力で掴まれていて廉の手は離れない。



「……どうでもよくないから、聞いてるんだよ」



大きく息を吐きながら、吐き捨てるようにそう言う廉に何も言い返すことは出来なくて、私は黙り込むばかりだった。



< 289 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop