WITH



「わからない?俺、ココに一度だけ泊まったことあっただろ?」



記憶の糸を手繰り寄せて思い出したのは、駅のロータリーで晴哉から奪うように廉が私を連れ去った日のこと。


……廉と私が初めて、一晩一緒にいた日。


あの日……



「あの日、廉もシャンプー使ったから……?」


「みたいだな?
……なんで女って、そんな小さいことに気付くんだよ」



信じられない、とでも言う風に苦笑している廉に、私は蜜華さんを思い出していた。


男の人にとっては、香りなんて重要なことじゃないのかもしれないけど。


きっと、蜜華さんは苦しかったんじゃないかな……



「それは……、それだけ蜜華さんが廉のことを好きだったからじゃない?」



< 342 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop