WITH
「わからない?俺、ココに一度だけ泊まったことあっただろ?」
記憶の糸を手繰り寄せて思い出したのは、駅のロータリーで晴哉から奪うように廉が私を連れ去った日のこと。
……廉と私が初めて、一晩一緒にいた日。
あの日……
「あの日、廉もシャンプー使ったから……?」
「みたいだな?
……なんで女って、そんな小さいことに気付くんだよ」
信じられない、とでも言う風に苦笑している廉に、私は蜜華さんを思い出していた。
男の人にとっては、香りなんて重要なことじゃないのかもしれないけど。
きっと、蜜華さんは苦しかったんじゃないかな……
「それは……、それだけ蜜華さんが廉のことを好きだったからじゃない?」