WITH


“あの日”のように、背中を押されていた。



白線なんかすぐに飛び越して、線路に吸い込まれるように落ちていく私。


視界も反転して……
まるで、スローモーションのようにゆっくりと自分が落ちていくのを感じながら、

“電車が来たら、轢かれて死んじゃうな……”

なんて、考えていた。


来るであろう衝撃に目を閉じた時、グイッと腕と腰を引かれて……


衝撃は、何一つ感じられなかった。


恐る恐る目を開くと、抱き抱えるように腰にまわされた腕と握られた左手首が視界に入る。



「大丈夫、か……???」



背後から聞こえた声に振り向けば、私に絡む腕の正体は……



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