WITH
視線も合わせないまま頷く私に、いろんなことを尋ねてきたような気がするけれど、何も頭に入ってこなかった……
誘導されるがまま、私と啓祐は駅の事務所に連れて来られていた。
「何があったのか、詳しく話してもらいたいんだけど……」
駅員さんの言葉に、だんまりを決め込む私。
苦笑いの駅員さんは、困り果てて啓祐に視線を投げ掛けている。
「ちょっと……ふらついただけだよね?」
啓祐が強い眼差しを私に向けてそう言うから、私は静かに頷いておいた。
“誰かに押されました”なんて言ったら、大変なことになってしまう。
警察沙汰なんて……廉が、余計に気にするだけだしね。