WITH



―――廉、今すぐには来れないんだ……


本当、何をしてるんだろう???


更に沈む気持ちを隠しきれず悶々と考えている間に、電話を終えたらしい啓祐。



「廉、用事済んだら、紗和ん家に行くって」



廉からの伝言を伝え、
「電車、乗れそう?」と顔を覗き込んできた。


未だ目の前でごった返している人波を見つめ、その先にあるはずの線路が思い返されて……私は首を横に振った。


あの人々の中に行くのさえ、無理そうな気がする。


今、このベンチより先に行くのも足がすくむんだから……絶対、無理だと思う。


「じゃあ……時間はかかるけど、バスしかないね?」



大きく息を吐いてコクリと頷いた私に「行こうか……」と、ベンチから立ち上がった啓祐の背中を追いかけて、駅をあとにした。



< 98 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop