WITH
いつもより1時間は遅くなってしまったけれど、何事もなく家に帰り着いた。
送ってくれた啓祐に、お母さんが「お茶でもどう?」なんて誘っていたけれど、丁寧な断りを入れて啓祐は帰っていった。
―――私が頼んだ通り、啓祐はお母さんに駅でのことを伝えずにいてくれた。
これ以上、何かあったなんて知れたら、廉と付き合うことまで反対されてしまうかもしれない。
廉と一緒にいたいから耐えているのに―――
自分の身が危険に晒されてしまっているとしても、私は廉との未来が欲しいから……嘘をつくことも厭わない。
「お母さん、あとで廉が来るから……」
私と律の部屋がある2階へと続く階段へと歩みながら、リビングへ戻ろうとしているお母さんにそう伝えておいた。
「えぇ、わかったわ……」
にっこり微笑むお母さんに、出来るだけ精一杯の笑顔を返して、私は足早に階段を駆け上がった。