先輩と私と。
大人しくついていって乗った電車。




もう景色はオレンジになりかかる。





「本当にみんな、成長していますね」



私たちを席に座らせて、その前に立った顧問が言う。





「ホントですよ!!!」





「去年じゃ、ソロで吹くことすら考えられなかったでしょう?」




「そりゃ、もう」






あははは、と笑って、




あの頃の音聞いたら、自分がしょぼ過ぎて泣くかもね、なんて話す。






「先生、お腹空きました」





「あと30分ぐらいで帰れますから」





「30分もあったら餓死します!!」





ご飯おごってくださいよ、と冗談っぽく言ってみた梨乃。





「おごりません」




と硬い顧問は、冗談にすら動じない。





「あれ、百合?」





まだ県代表っていうのを受け入れてないのかもしれない。





「どうしよう、わかんないよ」





喜んでもらわないと困るのに、まだ失神状態みたい。





「山宮さん」





顧問は真剣な眼差しで百合を見た。





「今までは2人でソロコン練習で、コンサートの練習はしていませんね。先生もまさか県にいけるなんて予想してませんでしたから、許していましたが、これからは大変ですよ。




ソロの練習傍ら、コンサート曲もしっかり譜読みしていってくださいね」







不器用な顧問なりに、渇を入れたみたい。





「.....そうですよね。頑張ります」





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