もう一度愛を聴かせて…
わたしはなんとか肘をつき、上半身を起こそうとした。


「ちょっと待って、奴って誰? なんのことかわからない。やだ、やめて!」

「だったら黙って脱げ! この場で確かめてやる」


そう言ってバスローブを左右に開いた。

こんな状況でも、わたしはまだ深刻には考えていなかった。彼は何か誤解しているのだ、すぐに優しい彼に戻るはず、と。


「イヤッ!」


胸が露わになり、わたしは慌てて隠そうとする。


「なんだよ、それは!」


彼はわたしの胸元を凝視し、声を荒らげた。

逆にビックリして胸元を見ると、左胸の上のほう、鎖骨の下あたりが赤く充血している。


「やっぱり――市村か。市村にキスマークなんかつけられやがって!」


両肩を掴まれ、身体を揺さぶられた。


「えっ、どうして市村さんのことを? あ、でも、そんな……キスマークなんて、わたしは……」


あとになって思えば、このとき市村さんの名前を口にするんじゃなかった。

でも混乱した頭で、そんなことに気づくはずもない。わたしはただただ、どうしてキスマークがついているのか、必死に考えるだけだった。


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