RED ROSE


「そんな……無茶です」

「暴行を受けるのが判ってるのにきみを帰せない!」

 そう言った大翔が一瞬、ひどく辛そうな瞳をし、美玲は驚いた。

「二間あるアパートを探すよ。それまでは狭いけどここにいて。僕は絶対にきみに暴力をふるったりしないから」

「朝比奈さん……」

 ――なぜ、そんなに哀しい目をするの?

 大翔の瞳に宿る闇に、美玲は堪らず唇を噛み締めた。凄く、哀しい……。

「……警察に行けないなら、僕がきみを守るよ」

 思いもよらぬ展開に戸惑いながらも、心の片隅で小さな恋心が喜んでいる。

「本当に……いいんですか……?」

 すがるように大翔を見つめ、美玲は呟いた。

 ――ここにいてもいいんですか……?

「助けて……くれますか……?」

 美玲の問いかけに、大翔が黙って頷く。

「ありがとう……」

 そう言った後は涙が溢れ、もう、何も言えなくなった。

 一度は諦めかけた恋。だが、必死に伸ばした手を優しく掴まれた気がして、美玲はただただ、泣き崩れた。しかし、俯いて泣く彼女は気付かなかった。苦しそうに歪む、大翔の表情に――。
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