RED ROSE
昼休みを利用して訪れた不動産屋で、いくつかパンフレットを貰った彼は、駐車場でバイクにもたれながら、それをパラパラとめくっていた。
――ここなら、俺の給料でもやってけるかな。
ある物件のページで指を止め、ゆっくり読み始める。とりあえず、互いに個室が持てればいい。
そんな気持ちでもう一度間取りを見る。早く、美玲が安心して暮らせる部屋を用意したいと言う気持ちが、確実に大翔の気持ちを焦らせていた。
――確か、中学に上がった頃からって、言ってたよな。
昨夜の美玲の痛々しい姿が思い出され、大翔は下唇を強く噛みしめた。横隔膜のあたりから、まるで泡が立つように、むくむくとある感情が沸き立つ。大翔は思わず口元を押さえ、顔をしかめた。
時計の針が、午後の業務が近づいている事を知らせる。大翔はパンフレットを閉じると、無造作にそれをデイバッグに押し込んだ。
俺が、守らなきゃ……。
熱風が首筋にまとわりつき、何となく、馬鹿にされているような感覚に襲われる。大翔は上を向いて空を一瞥した後、哀しげな目で、作業服の襟元を緩めた。