RED ROSE
「……何でもないよ」
そう、何でもない。
まるで自分自身に言い聞かせるようにそう言い、立ち上がる。その様子に美玲が鞄を肩にかけた。
「大翔さん」
店を出てすぐ美玲に名前を呼ばれ、大翔は足を止めた。振り返った街の景色はまるで、無造作に散りばめた星のように華やかなイルミネーションで溢れている。その光の中で、大翔を正面に据え、美玲は立っていた。
「あなたが好きです」
唐突に美玲が言った。そして続けて、
「例えあなたが過去にどんな罪を犯していても、あたしのこの気持ちは変わりません」
と、真っ直ぐな瞳で、そう告げた。それはまるで、“過去など関係ない”と告げているようだった。