すっぴん★

俊介は浴室を出ても、暫くバスタオルに顔を埋めていた。
バスタオルから顔を上げても、まだ目がうるうるしている。


「どうしたの?」


素が、俊介の顔を覗き込むようにして尋ねた。

「・・・。ああ、シャワーの水が目に入っただけ」

「そう。それならいいけど。じゃ、私もシャワーを浴びるね。からすの
行水で上がって来るから、待っていてね」

「うん。いいよ」

浴室に行く素の後ろ姿を見送りながら、俊介が言った。




(う・ん・め・い・の・ひ・と)




俊介が素の背中に、一言、一言、無言で呟いた。


暫くすると、素が浴室から出て来た。





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