すっぴん★

(あれは、確か、化粧を始めたばかりの頃だった。突然、顔の一部が
苺のように真っ赤にただれ、猛烈に痒くなったのは・・・)


(なぜ?何故なの。化粧とは女性を美しく見せるものではなかったの。
それが・・・。それが・・・。化粧なんか金輪際するもんか)


化粧のせいだと思い込み、化粧を激しく恨んだ日の事を、素は今もは
っきと覚えている。
それ以来、化粧するのを止めたっけ。


素は暗過ぎる青春の1ページを、苦々しく思い出していた。



「写真を撮らせてもらっても構わないか」


俊介の言葉で素は我に返った。


「写真?」


素が俊介の目を見詰めた。


「ん。犯人はきっと何がしかの手掛かりを残していると思うんだ。捜
査の第一歩は、現場を丹念に検証する事から、と言うだろう。後で、
写真を見ながらゆっくりと犯人捜しをしたいんだ」


「分かった。いいわよ」


素は快く写真撮影のOKを出した。







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