満月の人魚
「頭痛?ボールが当たったせいか?」

「いいえ、慢性的なものなの。」

いつ痛くなるかわからないから、いつも薬を持ち歩いて対処しているのだと説明すると、黒沢は難しい顔をした。

「その薬、一粒貰えないか。」

「……別に構わないけれど…。」

黒沢も頭痛持ちなのだろうか。

瑠璃はスカートのポケットから薬を一粒取り出して、黒沢に手渡した。

黒沢は薬を繁々と見つめては、ブレザーのポケットに慎重に入れる。

その行動には疑問を感じるものの、黒沢の言動は不思議な事ばかりだ。

(気にしても仕方ないわね。)

瑠璃は深く考える事を諦め、軽く溜息をついた。
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